フィッシュボーンチャートの概要
フィッシュボーンチャートは、品質管理や業務改善の現場でよく用いられるツールです。
その形状が魚の骨に似ていることから、こう呼ばれています。正式名称は「特性要因図」または「原因と結果の図」とも呼ばれ、日本の品質管理の礎を築いた石川馨(かおる)博士によって考案されました。
本記事では、フィッシュボーンチャートの概要や目的、具体的な作成方法、活用の場面などを順を追って説明します。
フィッシュボーンチャートの目的
1. 問題解決のツールとしての位置づけ
フィッシュボーンチャートは、問題解決の際に発生するさまざまな要因を整理し、根本原因を特定するために用いられます。表面的な対策で終わることなく、原因を深掘りして本質的なソリューションを導くことが可能になります。
2. 原因と結果の関係の可視化
多くの問題は、複数の要因が絡み合って発生しています。フィッシュボーンチャートでは、問題(結果)を骨の背骨部分に書き込み、その原因を骨の枝部分に整理していくことで、どの要因がどのように影響しているのかを視覚的に把握できます。
3. チーム協力の促進
フィッシュボーンチャート作成時には、チームメンバー全員でアイデアを出し合いながら取り組むと効果的です。異なる視点が加わることで、より多角的な原因の洗い出しが可能になり、チームのコミュニケーション活性化にもつながります。
チャートの作成方法
1. 問題の定義
まずは分析対象となる問題を明確にしましょう。できる限り具体的に、定量的な指標を含めた形で設定すると、原因の特定や後の効果検証が行いやすくなります。
2. 主要カテゴリの設定
フィッシュボーンチャートでは、原因を大まかに分類するための主要カテゴリを設定します。
製造業などで一般的な「人・方法・機械・材料・測定・環境」をはじめ、自社の業種や課題内容に応じてカテゴリを適宜カスタマイズして構いません。
3. 各カテゴリの詳細要因の特定
設定したカテゴリごとに、ブレインストーミングやヒアリングを通じて具体的な要因を洗い出します。
関係者全員の意見を反映することで、思わぬ原因が見つかる場合もあります。
4. 根本原因の特定
洗い出した要因の中から、問題に直接的な影響を与えているものや、解決の手がかりになりそうなものを深掘りして根本原因を特定します。
必要に応じて「5 Whys分析」などを取り入れて、より本質的な要因を見極めましょう。
5. 解決策の立案と実行
原因が明らかになったら、具体的な解決策を検討します。
実行後は効果測定を行い、改善が十分でなければ再度フィッシュボーンチャートを修正しながら対策を強化していきます。
フィッシュボーンチャートの利点
- 視覚的な問題分析:原因と結果の関係を一目で理解でき、全体像の把握に役立ちます。
- 体系的なアプローチ:カテゴリ分けにより論理的・網羅的な問題分析が可能です。
- チーム全体の参加促進:メンバー全員が意見を出しやすく、協力体制が強化されます。
- 根本原因の効果的な特定:問題の根本原因にアプローチするため、再発防止策が立てやすくなります。
使用上の注意点
時間とリソースの必要性
フィッシュボーンチャートの作成には、ブレインストーミングやアイデアの精査など、一定の時間と人材リソースが必要です。大規模または複雑な課題であれば尚更、しっかりと時間を確保しましょう。
経験やスキルの重要性
問題を深く理解し、要因を的確に洗い出すためには、対象分野の知識や問題解決の経験があるメンバーの参加が欠かせません。誤った前提で分析を進めると、対策そのものが的外れになる可能性があります。
複雑な問題での使用限界
原因が多岐にわたる高度な問題では、フィッシュボーンチャートだけでは対応しきれないケースもあります。その場合は、他の分析ツールやデータ解析手法と組み合わせて活用しましょう。
適切な使用状況
- 複雑な問題の分析:多くの要因が想定される場合に有効です。
- チームでの問題解決:関係者全員で作成することで、情報共有と協力体制の構築がスムーズに進みます。
- 包括的な原因分析が必要な場合:全体像を見渡して抜け漏れなく原因を特定したい時に適しています。
代替ツールの紹介
- 5 Whys分析:なぜを5回繰り返すことで、問題の深層を探る手法。
- SWOT分析:自社やプロジェクトの強み・弱み・機会・脅威を整理し、戦略策定に活用。
- パレート図:問題や不具合の原因を重要度順に視覚化し、優先順位をつけやすくします。
フィッシュボーンチャートの効果的な使用方法を以下に示します。この手法を使用することで、問題の根本原因を特定し、体系的に解決策を見つけることができます。
まとめ
フィッシュボーンチャートは、問題解決のプロセスを視覚化し、チーム全員が原因を多角的に分析できる非常に有効なツールです。
一方で、利用には時間や適切なスキル、そして継続的な検証が必要になります。問題によっては、他の手法と組み合わせて使うことで、より正確かつ持続可能な改善が期待できます。
最終的には、問題の根本原因を明らかにし、再発を防止することがゴールです。フィッシュボーンチャートをうまく活用して、チーム全体で協力しながら本質的な解決策にたどり着きましょう。